日本のマラソンはなぜダメになったのか [著]折山淑美
レジェンドたちからのダメ出し
宗茂、瀬古利彦、中山竹通、児玉泰介、犬伏孝行、藤田敦史、高岡寿成。マラソンの日本記録を更新した7人のインタビューを通して、日本マラソンの衰退の理由を浮き彫りにしていく。
日本がまだ世界と戦えていた時代の宗、瀬古、中山のコメントは自信に満ちている。
私や宗さんたちがやった練習はもう古いとか、そこまで走り込まなくてもいいと言う人たちもいるけど、彼らの話しているのは2時間11分くらいのマラソンのことでしかない。「そんな練習をやらせても、今の選手にはできない」という指導者は、選手にマラソンを走るなと端から言っているのと同じです。
とは瀬古はばっさり。
中山いわく「2時間10分以上かかったらマラソン選手ではない」。
児玉泰介は、宗茂と同じ練習メニューに挑戦して故障してしまったという。食事のメニューも同じものは食べられず、脂汗。
ニッポンマラソンの黄金時代の“超人”たちに較べ、犬伏以降の4人の言葉はややトーンが低い。
それでも、「今はラクをして強くなりたいという選手が多い。」(児玉)「今の選手は何かと言うと、“日本人トップ”というコメントを口にするので物足りない。」(犬伏)「練習あくまで試合のためのものなので、それまでに泥にまみれようが何でもやった方がいい」(藤田)、「トラックでも日本記録を作るためにペースメーカーを置くなどお膳立てし過ぎ」(高岡)と手厳しい。
現役ランナーは現実的だ。川内優輝は、30km以降切り替えに対応し最後の5kmを粘るためのトレーニングで金メダル以外のメダルを狙うということを考えているという。
世界が2時間切りを狙っている中、2002年に高岡が作った2時間6分16秒が更新できない日本マラソン界。この現状をクールにとらえて、現実的な結果を求めるしかないのだろうか。いっそのこと、アフリカに逆留学してマラソン修行なんて、ないよなあ。